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某日記別館(裏日記)。トンデモや時事に特化。
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「幸せなお産」が日本を変える
講談社+α文庫。著者は、自然分娩を推奨する産科医・吉村正氏。

個人的には、「自然分娩」も出産における選択肢の一つだとは思ってます。
ただ、それはあくまで現代医療と比較した上で、
①自然分娩が、出産時のリスクが高いことを予め理解しており、
②不測の事態に備えて輸血等の処置が可能な病院への搬送手続が確保され、
③そしてそれらの事情につき事前に説明され、両親とも承諾している。

…という前提ありきの話です。

逆に、これらの前提さえ担保されているならば、自然出産は「生命の誕生」という人生における最大の神秘を実感でき、またその瞬間に立ち会えることができるわけで、両親にとっては替え難い巨大な感動を与えてくれましょうし、貴重な経験には違いありません。



しかし残念ながら、著者は現代科学と現代医療、そして現代医療による出産に
強い敵意を持っており、これらに対し過剰なまでの批判・罵倒をしております。
(当然、真っ当なインフォームドコンセントなど望めないと考えた方が良い)

著者の思想と現代医療に敵意・嫌悪感は、患者にまで強い影響を及ぼします。
【信仰と狂気~吉村医院での幸せなお産】(NATROMの日記)
上記コメント欄に、病院関係者と思しき人物が乱入。なんか、すごいことに。
【吉村病院関係者降臨の巻】(幻影随想)

ちなみに、現代医療を過剰に批判・罵倒する反面、この著作の中では、
吉村医院における自然分娩のリスクに関しては、病院搬送(帝王切開)3.2%という
データ提示のみで、死産に関わるデータは一切提示しておりません。
著しく不公平・不誠実な態度とは言えるでしょう。

まぁ御本人自らが「データ嫌い」と本の中で述べておらるわけですが、
氏の提示するデータが如何にアバウトかを示す記述を挙げると

 あるとき、私の講演で、こんな質問をした人がいました。
 先生はいまの産科学を否定されますが、医学が進歩し、お産を支えるようになったからこそ、周産期死亡率が下がったのではありませんか
 たしかに、昔は1000人のうち40人の赤ちゃんが生まれる時に亡くなりました。今は1000人のうち7人くらいしか死にません。それは医学の進歩のおかげではないか、とその人は言うのです。(中略)
私は思わず「バカを言え!」と言ってしまいました。40人死ぬはずが、7人に減ったとしても、そのことは幸せか?自然に生まれれば死んでいた命を、医学の力で無理やり生かし、いっぱいの管につないだり、あちこち切ったりして、延命させたところで、はたしてそのことで人類の幸せが増したことになるのか?
40人死んでいた時のほうが、よほど子供はうまく育っていました。 
(中略)原始的であったほうが、人としては幸せだったかもしれない。
                         (97~98頁)
 
話の内容もツッコミどころ満載ですが、データに絞って話を進めます。
著者の言う「」=「周産期死亡率7/1000」とは、かなり昔の話です。
統計から推測すれば、1990年頃(今から20年ほど前)になります。
この本の発行された2008年現在は、もっと低下してます(3/1000程度)。
で、著者の言う「」=「周産期死亡率40/1000」とは、逆にそれほど
以前の話ではありません。データによれば、昭和35年(1960)前後のようです。

では、著者の言う「」とは、1960年頃を指すのかと言われれば、さにあらず。
本文の中で、江戸時代の出産方法などを、かなり絶賛されておられますので、
敢えて江戸時代と仮定。「周産期死亡率」のデータなど当然ありませんのんで、
周産期死亡率と、ほぼ数値が対応している乳児死亡率に関して言えば、
著者の理想とする江戸時代(当然、自然分娩しか行なうことができない)の数値は、
驚くなかれ180~200/1000という記録が残ってます
生まれてくる5人か6人に1人が亡くなっている計算です。
40/1000でも、充分に医療技術の発達してきた成果と言えます。

また、データのみならず、著者の倫理観そのものを疑わせる記述もあります。

「死ぬものは死ぬ、生きるものは生きる。死ぬものを助けてどうするのだ」
 誰と会っても、どこの講演会に行っても、私が必ず言う言葉です。(中略)いちばん誤解されやすい言葉ですが、しかし私が二万例以上ものいろいろなお産を見てきて悟った、いちばん真実をとらえた言葉でもあります。
      (中略)
 生きるか、生きないかは神が決めることであって、医者が決めることではない。異常があるから死ぬのであって、死ぬべきものが死に、生きるべきものが生きるから、強い生命が生き延びる。それが生き物の原則です。
 しかしいまの産科学では、死ぬものを無理やり、むちゃくちゃな努力で生かしている。(中略)その一方で自然に生まれて、完全な親子関係ができるお産をわざわざぶち壊しています。生命力溢れるお産をして、愛情溢れる母になる機会を奪ってしまう。そのため生命力のない子供がどんどん増えています。結局、種そのものの生命力が衰えて、人類は滅びに向かって進んでいます。死ぬべきものは死に、生きるべきものが生きていないからです。死ぬものが死んで、なぜ悪い。死と生は表裏一体です。死があるからこそ、生が輝くのです。
     (後略)
 たしかに子供が死ぬのは悲しい。残された者は、胸が張り裂けそうになります。でもその悲しみを受け止めて生きていくのが人生であって、絶対に死んでは嫌だとダダをこねるのは、人間のエゴであり、勝手な思惑に過ぎません。お産で自然に死ぬとしたら、それは死ぬべくして死ぬ命だったからではないでしょうか。
     (中略)
 生命の力に溢れた自然なお産を破壊して、死ぬものを無理やり機会と薬の力で生かす。現代の医学は欺瞞と矛盾で満ちています。そんなものを私は容認することができません。 
(179~181頁)

「死ぬものは死ぬ、生きるものは生きる。死ぬものを助けてどうするのだ」
御本人は、これが決して無責任故の発言ではない旨述べておられますが、
少なくとも、これ遺族を前にした医療関係者の用いる台詞ではないと思います。
(でも、実際に本人は用いているらしい。曰く「運命じゃ」とか)
この理屈が通用するなら、いつでも責任回避に用いることができますし、
実際にこの台詞を吐くこと自体、無責任と思われても仕方ないんじゃないかと。
 
また、死ぬべき命を救うことが人間のエゴであると縷々述べておられますが、
医療技術が未発達なために昔なら死んでいた(死なざるを得なかった)命が、
医療の発展により無事に生まれ育つことが、果たしてエゴなんでしょうか。
(必然的に未熟児は死ぬべき命ということになる。川澄綾子ファンは怒るべき)
(逆に、尊厳死、安楽死に関しては、こちらは安易に即答はできませんが)
それこそ氏の理想とする自然分娩しか手段のなかった江戸時代には、
現代と比較して50倍以上の乳児が亡くなってるんですが、
彼らは吉村氏の言うとおり、死ぬべくして死んだ生命であり、
もし生きていたとしても「幸せ」になれない生命だったんでしょうか。

第一、現代医療に救われた命が「幸せ」に生きられないと、どうして分かるのか。
それこそ神のみぞ知るはずの、人間の生命やその人生までも、
自らの思惑で一方的に評価し、現代医療だから無価値と断ずるようなことは、
それこそ自らを「神(の代弁者)」と考えるような傲慢さではないかと思いますが。

後半からも読み取れるんですが、この本を読むにつけ、どうも吉村氏、
自然な出産か否かで、生命の価値に優劣が存在する
と考えておられるように思えてなりません。
これはこれで、ある種の優生思想と言えるのではないかと。
現に、ダーウィンの自然淘汰説を単純な優勝劣敗原理と勘違いしてますし。
(それこそ、かつてどこぞの大日本帝国で流行したような)

結論としてこの本は、客観的データに乏しい上に不誠実。
過去を徹底して美化する反面、具体的な資料・データなど考慮に入れず、
自説に適合する事象のみを、しかもアバウトに切り貼りしただけの
ほとんど「印象論」ともいうべき都合良く理想化された安易な歴史観。
そして、その安易な歴史観に基づく生命観により善悪・価値を決め付け、
倫理的にも薄っぺらく一面的。大いに問題がある書籍と断じざるを得ません。


自然分娩」そのものに関しては、冒頭の通り評価はしているつもりです。
しかし少なくとも、この病院だけは
やめた方がいいんじゃないかなあ


実際、自然分娩以外で出産の充実感が得られないかといえば、
これもそうとは限らないと思うんですけどねえ。
【病院での出産について】(ロボット3号が行く)

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