【H19.5.25追記】 kikulogはなんにも知らないよ!? Part 2
> 何日か見ないうちに、いつのまにか“差別”の話になっていました。
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この部分以下の文章が、実は憲法解釈的に
「なんじゃそりゃ?」。
菊池さんと比較してどちらが変かといえば、そりゃABO FANさんの方です。
「憲法は国と国民の関係」 …てのは、まぁその通りでしょう。
確かに憲法の成り立ちを考えれば、本質的には
国家vs国民の関係。
元々は、自由だの平等だのという概念の成り立ちを考えれば、
「国家による制約からの自由」「国家による扱いの平等」
からスタートしていることは、歴史的に見ても確かに間違いないところです。
しかし、社会・経済が発展し、資本主義の高度化が進行するにつれて、
企業・組合・経済活動・メディアなど、
国家形態に類似した私的組織が
次々と誕生し、それに伴い、それら国家類似の
「社会的権力」による
人権侵害から国民の人権を保護する要請が出てくるようになったのです。
【H19.5.25追記】 kikulogはなんにも知らないよ!? Part 2
憲法は就職時の“差別”のような、国民と民間企業の関係を何ら直接的に拘束するものではありません。「就職の話」でいうと、憲法に何が書いてあろうが、個別の法律での規制がなければ、差別”は合法ということになります。ですから、どう考えたって、憲法のこの条文(法の下の平等)が就職差別禁止の根拠となりようがありません。
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結論から先に言えば、この部分は
完全に 間違っております。
てゆうか、えらく前時代的な憲法解釈ですな(産業革命期くらいか?)。
憲法の人権規定・平等規定は私的関係(人vs人)でも適用されるのです。
実際にそうでもしないと、
国家による差別はNGだけど、
社会的権力(企業・メディア等)による差別はOKになっちゃいますが、
ABO FANさん、それでも宜しいのでしょうか?
(まぁ宜しいんだろうな。
「差別は合法」 とか言ってるくらいだし)
私人間における憲法適用の考え方は、以下の通りです。
人権は、戦後の憲法では、個人草原の原理を軸に自然権思想を背景として実定化されたもので、その価値は実定法秩序の最高の価値であり、公法・私法を包括した全秩序の基本原理であってすべての法領域に妥当すべき者であるから、憲法の人権規定は私人による人権侵害に対しても何らかの形で適用されなければならない。 (芦部信喜 『憲法・新版』 P.106)
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つまり、憲法は私人間にでも適用されるのです。
論点になるのは、人権規定の適用のされ方が
「直接か間接か」ってだけ。
憲法の条文を、私的関係にそのままストレートに適用するのではなく、
民法の
公序良俗規定など、
私法の一般条項を、憲法の趣旨を取り込んで
解釈・運用することにより、私人による人権侵害を
間接的に規律するのです。
これを、憲法の
「間接効力(適用)説」 と言います(通説・判例)。
(一応、私人における人権侵害を以て
憲法違反(違憲)とは普通言わない)
ちなみに血液型による差別又は偏った取り扱いが為された場合、
それは科学的根拠なき完全な法律違反
(それも一般条項違反)となります。
一般条項違反ってことは、ある意味、
根本原則に悖るほどの大違反。
裁判で立証されれば、負ける可能性極めて高い。
(あくまで「立証されれば」ですが)
【H19.5.25追記】 kikulogはなんにも知らないよ!? Part 2
血液型に話を戻すと、「血液型差別禁止法」があるという話は聞きませんし、日本で裁判になったということも聞いたことはありませんから、仮に血液型による“就職差別”があったとしても─現時点では─合法としか言いようがありません。
つまり、現時点では(差別は)合憲ということです。少なくとも、明確に違憲とは言えないはずです…。
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少なくとも、こういう
差別を容認する台詞をのたまう人間よりは、
「血液型による雇用差別は憲法違反!!」
…と言う人の方が遥かにマシです。 例えそれが理系の人であろうとも。
少なくともABO FANさんより
人権概念への理解があると考えるべきでしょう。
追記【6/19】
kikulog経由で訪れる人が多いようなので、もうちょい詳細に解説。
憲法が私人に直接適用されるか否かについては、学説は三説あります。
①. 無効力説
②. 直接効力(適用)説
③. 間接効力(適用)説
三説あるとはいえ、
通説・判例は③.を支持することに争いはありませんし、
分かれるといっても最終的に
どの学説でも結論にそう変わりはありません。
理系と異なり、学説が違っていても結論が変わらない場合も多いのです。
論理仮定は異なれども、互いの説のベストは共通するわけで。
①. 無効力説
憲法に規定のある場合(15条④.16条.18条.27条③.28条等)などは、
私人間における憲法の適用を認めてますし、私法内にも関連法律規定があれば
憲法の精神に照らして解釈するのを否定はしません。
②. 直接効力(適用)説
この説を原理的に徹底すれば、国家による直接の人権管理に直結しますし、
果ては全体主義への繋がる弊害があることから鑑みて、
これを原理的に徹底させようとする学説は見られません。
(つまり、「直接適用」とはいっても、あくまで制限的なものでしかない)
③. 間接効力(適用)説
上記本文で解説済なので略。
よって
②を根拠にして、
「血液型による雇用差別は憲法違反(違憲)」
と主張するのも、あながち間違いとは言えないと思います。
③が通説・判例なので、そちらの論理構成を採るのが無難とは思いますが。
ただ結局のところ、
①~③説に共通するのは、
基本的人権は元来、公権力との関係のものであり、私人間での人権保護の第一義的任務は原則国会にあるのは前提としながらも、私人間に適用されることは措定(そてい)されている。 (佐藤幸治『憲法〔新版〕』P.397)
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どの説を採っても、ABO FANさんの記述は憲法解釈的に間違いです。
(ABO FANさんの主張は、①を都合良く原理化した「説」とも呼べないシロモノ)